きつい締め付けに、鴆も息を止める。汗ばんだ脇腹を撫で上げれば、涙の膜が張った眸を向けられた。
 強すぎる快感に苛まれるのか、唇を薄く開いたリクオは苦しげに胸を上下させる。
「リクオ、……もっと、だ」
 相手がちゃんと意味を捉えているのか、もう定かではない。
 くずおれる寸前の姿勢をかろうじて保って、リクオは促されるまま腰をまわす。痙攣するよう震える身体は、もうずっと限界のようだ。
 目を伏せた表情に、切なげな吐息に、貪欲な身体に、酔わされる。このまま腕の中に閉じこめたいと、灼け付く激しさで願う。とうに正気を失っているのは、自分なのかもしれなかった。
「……ふっ……ぁ、んっ……」
 ただ鴆を感じようと、リクオが懸命に快感を追う。朱い所有印の散った身体が、鴆の上で扇情的に揺れる。
 柔らかな秘奥が鴆の鋒へとまとわりついて、濡れた音を聞かせた。啜り泣きにも似た喘ぎが途切れることなく耳を打つ。絡み合う淫らな響きは意識を眩ませて、熱い繋がりだけを確かに感じた。
 互いの境界すら曖昧で、蕩けた膚がどちらのものか、もうわからない。
 堪らず、鴆はリクオを横たえると、両脚を抱え上げて自身の楔を打ち付けた。
「……ぁっ……鴆……っ……や、ぁ……っ……」
 深く貫き、容赦なく最奥を穿つ。
 途端に跳ねた身体に、同じ箇所を繰り返し責める。
 鴆の身体に、リクオの足が縋るように絡み付いた。細かく震える膚はリクオの果てを教えて、その先をねだる。
「……もうっ……イ……っ……」
「……リクオ……っ……」
 呑み込まれる、と思った。
 背を撓らせたリクオが、悲鳴を堪えるよう息を止める。張り詰めた身体を大きく戦慄かせると、縛めが解けたように精を迸らせた。
 後を追って、鴆もリクオの中へと欲情を注ぎ込む。脈打つままにすべてを吐き出せば、掠れた喘ぎが応えるように耳を打った。

 荒い呼吸が、二人の間を埋めている。
 ゆっくり身体を離すと、鴆はそのままリクオへと身を添わせた。瞼を落とした目の端には涙の跡がある。口付けで拭って、乱れた髪を愛しげに撫でた。
 消耗がひどいのか、リクオはわずかに身じろいだだけだ。けれど不意に顔を上げ、目を見開くと、掠れた声をあげた。
「……なあ、日付、」
 小さく咳き込んで、顔をしかめる。散々啼かされたせいで、喉が嗄れたのだろう。
「もう、今日だよな?」
「……ああ、そうだな」
 一瞬何が今日なのかわからず、けれどすぐに、リクオが何故来たのかを思い出す。手元に時計はなかったが、とうに日付は変わっているはずだった。
 リクオが嬉しそうに顔を綻ばせる。
「じゃあ、……誕生日、おめでとう、だな」
「……ありがとな」
 言った途端、照れたように視線を逸らしたリクオに、くすぐったい気持ちが胸を覆った。
 ふとした瞬間に見せる顔が、どうしようもなく愛しい。それはリクオと恋仲になって以来、日に日に強くなる感情だ。
 今腕の中にいるリクオは自分だけのものだと、強く感じる。そして、こうして共に日を重ね、自分だけが知る顔をもっと見せてくれればとも。
「……嬉しいよ」
 その額へと、静かに唇を押し当たる。
 笑んだ気配とともに、リクオから口付けが返された。
                                    (了。12.08.12.) 

文庫目次